テザー（Tether）社、ユヴェントスへの出資比率を10.12%の保有で筆頭株主に

テザーがユヴェントスの筆頭株主に

テザー （Tether）社は、イタリアのプロサッカークラブである Juventus Football Club （ユヴェントス・フットボールクラブ）への出資比率を強化し、クラブ発行済み株式の10.12%超を保有で筆頭株主になった事がわかった。

1897年に設立されたユベントスは、国内リーグで36回の優勝を誇るなど、ヨーロッパで最も多くのタイトルを獲得したクラブの一つで、テザー社が保有する株式には、ユヴェントスの議決権の6.18%が含まれており、以前の8.2%の株式保有で取得した議決権5%から増加。この買収により、テザーはヨーロッパ屈指のサッカークラブの重要な少数株主となった。

この戦略的投資は、世界最大のステーブルコイン発行会社であるテザーとトリノを拠点とするサッカークラブとの関係深化を示しており、両者はスポーツとテクノロジー分野における長期的な協業を目指している。テザーのパオロ・アルドイノ（Paolo Ardoino）CEO（最高経営責任者）は、同社はユヴェントスにピッチ内外で長期的な価値を見いだしており、特にファンエンゲージメントとデジタル展開のための新技術導入の可能性に着目していると述べている。また、同社は、クラブの財務安定化と既存保有株の希薄化防止のため、今後の資金調達ラウンドに参加する可能性も示唆している。

テザーは、PlanBイニシアチブを通じてスイスのクラブFCルガーノのユニフォームスポンサーシップを既に展開しており、ユヴェントスとの提携は、その拡大を続けるポートフォリオの最新パートナーとなる。同CEOは、次のように述べている。

ユヴェントスの主要株主となることを誇りに思います。今回の投資は単なる金銭的なものではなく、イノベーションと長期的な協業へのコミットメントです。

ステーブルコイン規制を遵守によるビットコイン売却の可能性による動きか

USDTステーブルコインの発行企業として知られるテザーは、昨年130億ドル（約1.8兆円）の利益を計上し、最近ではビットコインマイニング、AI（人工知能）、農業などの分野に投資している。

実際、2025年2月に同社は、南米の農工業企業Adecoagro（アデコアグロ）の過半数株式の買収を提案。Nasdaq（ナスダック）にティッカーシンボル「AGRO」で上場しているAdecoagroは、アルゼンチン最大の牛乳と米の生産者だ。また、ブラジルではサトウキビ栽培と再生可能エネルギー事業、アルゼンチンとウルグアイでは大豆やトウモロコシなどの作物の栽培も展開。既にAdecoagroの19.4%の株主であるテザーは、発行済み普通株を1株あたり12.41ドル（約1,780円）で買収することを提案している。

このような仮想通貨以外の投資は、JPモルガンのアナリストが、テザー社が米国のステーブルコイン規制を遵守するために保有ビットコインの一部を売却する必要があるかもしれないと示唆したことを受けて、同社の財務準備金に対する継続的な精査が続く中で行われている。テザー社は、200億ドル（約2.8兆円）以上の流動資産を保有し、米国債投資から四半期ごとに12億ドルの利益を生み出していると述べ、こうした懸念を否定した。